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​8.愛を信じていないあなたに

「500日のサマー」2010

監督 マーク・ウェブ

​出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット

​ズーイー・デシャネル 他

サマーに恋をした、最低で最高の500日。

グリーティングカード会社で働くトムは、ある日、秘書として入社してきたとびきりキュートなサマーに恋をします。

トムは運命の恋を夢見る男の子、サマーは愛なんて絵空事だと思っている女の子。

  

2人のボーイミーツガールな物語ですが、「ラブストーリーではありません」と、冒頭でテロップが入ります。

​そのとおり、これはラブストーリーではなく、男女のそれぞれの、愛情に関する成長物語といえるでしょう。

  

​​トムはグリーティングカードの会社で、カードに印刷される言葉を考える仕事をしていますが、本当は建築家を夢見ています。

夢見ていながらそのための行動には出ず、目の前の「できること、とりあえずやらなければいけないこと」をしているだけの毎日。そして同時に、いつか運命の恋がやってくると信じ待っています。いわゆる、ごく普通の草食系男子という設定。

  

サマーは、幼いころに両親の離婚を経験し、恋には終わりがくることを知ってしまいます。運命の恋などない、真実の愛などない、と信じています。トムとは正反対ですから、意見の衝突をしつつ「友達」であることを自由に楽しみます。

  

​物語はトムの視点からしか描かれませんから、サマーの心の機微はあまり語られることはありません。人をふりまわしているようにも見えるサマーは、男性から見たら思わせぶりで何を考えているかわからない悪女、ということになるのかもしれません。

しかし、これが恋愛のリアルなのではないでしょうか。

そんなに運命の恋など、誰もが経験するわけでもなく、都合よい展開が恋愛につきものなわけでもなく、なんだかよくわからないな、と相手のことを思いながら終わる恋愛関係(友達関係?)など、そこいらじゅうにある話ですね。

  

運命だ!と感じるできごとや出会いは、その人の感じ方次第であるといえます。

本人が「これが運命だ」と思えば、それが運命になり、それ以外にもあるかもしれない運命を見逃していることにもなるでしょう。

つまり「500日のサマー」は、トムが運命の恋であると思ってしまった、でも違った、ということが綴られている物語です。ただそれだけ、というと面白くもなさそうですが、この映画はそれで終わりません。

​運命の恋だと思って過ごす日々が、トムとサマーにもたらしたものは「大きな成長」でした。

  

恋や愛は破れて、傷ついて、初めて自分をふり返ることができる時間を与えてくれるものかもしれません。

何がいけなかったんだろう?相手はどう思っていたんだろう?

考えて、そこから見えてくるものは答えではなく、「自分の在り方」なのではないでしょうか。

  

運命の恋が向こうからやってくるのを待っているトム、夢があるのに違う仕事について何も動き出そうとしないで日々に甘んじているトム。

真実の愛なんてない、運命があるなんて信じられないと、ドライに奔放に生きているサマー。

そんな二人が恋人でもなく友達でもない、よくわからない関係でありながら、本当に楽しく自由で、他人と共に過ごすことの喜びを感じる毎日を過ごしていく。

その日々によって互いに気づきます。

  

トムは、運命なんて自分の在り方次第だと。そして自分の「今」を変えていこうと動き出します。

「本気の付き合いはできないけどそれでもいいのか」とサマーから最初に釘をさされていたのに勝手に恋心を進めてしまったトムは、失恋という痛手によって、運命に向いていた目を自分に向け始めるのでした。

  

サマーは、こんなに喜びを感じ合える関係も存在する、すべてが絵空事でもないのかもしれない。だとしたら、運命の恋も存在しているのかもしれないと思い始め、それは友情とは違うものだと気づきます。

トムの存在によって自分自身を見つめたとき、その運命の相手は友人としてのトムではなかったのでした。

  

こんなことしてくれるから、相手は私を愛してくれてるんだろう、

こんなに苦しい思いがあるんだから、私は相手を本当に好きなんだろう、

そういうことこそが絵空事なのかもしれません。

  

愛とは、独りよがりになりがちなもの。

相手の言動に一喜一憂し、自分と合う合わない、楽しい楽しくない、好きの度合いが大きい小さい、分かり合える分かり合えない、と測る。

でも、その根底にあるのは、自分自身の在り方です。

自分は自分を愛せるだろうか?自分は自分を理解できるだろうか?自分の今はこれでいいんだろうか?

​そこを考えていくことで、自分なりの愛を信じる道ができていくのだと思います。

  

自己肯定感を高める訓練をするときに、よく行われるのが「大切な友人に接するように自分に接してみる」というものです。

今ある感情をそのまま「それでいいんだよ」と認めてあげられること。「これも私なんだよね」と受け入れられること。

それが自分を大事にできること、自分を信じてみることに繋がっていきます。

  

​あなたがあなたの味方として、あなた自身を確立できてきた時、周りにある愛のカタチに気づくことができるようになるのかもしれません。

Love Yourself ‼

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