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C i n e m a    T h e r a p y

​1.生きるってなんだっけ?と思うあなたに

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『ゼロ・グラビティ』2013

​  

監督 アルフォンソ・キュアロン

​出演 サンドラ・ブロック

ジョージ・クルーニー

地表から600キロメートルも離れた宇宙で、ミッションを遂行していたメディカルエンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)とベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)。

スペースシャトルが大破するという想定外の事故が発生し、二人は一本のロープでつながれたまま漆黒の無重力空間へと放り出される。

地球に戻る交通手段であったスペースシャトルを失い、残された酸素も2時間分しかない絶望的な状況で、彼らは懸命に生還する方法を探っていく。

  

  

まずはじめに、賛否両論のある映画です。

設定としてありえないことが多すぎる、という指摘が多いのです。

​しかし、それはここでは論じません。それを補って余りある映画になっていると思うからです。

  

主人公のライアンは、じつは、娘を亡くすという過去のトラウマを抱えていて、生きる意味を見失っています。

極限状態の苦しさの中、宇宙という中での孤立感とたたかいながらトラウマと向き合います。

なぜそれでも生きなければいけないのか?

生き直すなんてできるのだろうか?その必要があるのだろうか?

娘を亡くした今、どうせもう自分には何もないのに。

  

地球の美しさを存分に目にする状況。

そこに生きている人たちの、日々の生活に思いをめぐらします。

あたりまえの日常からずいぶん離れたところから、人生を俯瞰する時間を思いがけず得たのでした。

  

ただ存在するだけの素晴らしさ。

地上に足がついていることの奇跡のような幸せ、かけがえのなさ、・・・

  

  

未来に生きようとする力は、視点を変えればわいてくるのかもしれません。

どんな人にもその力はあるのですから。

それを信じられる映画がたとえば、「ゼロ・グラビティ」といえるでしょう。

問題そのものに向かうパワーを、今少しだけ、ずらしてみませんか?

  

成し遂げること、美しくなること、何者かになること、

そんなことが「生きる意味」になるのでは、ないかもしれません。

頑張らなければ生きる意味がないというものでは、ないかもしれません。

今、地上に息をしていること、それだけでひとまず幸福です。

そこから一歩、歩き始めるなら、何をしようと大きな意味になるはずです。

  

  

グラビティとは重力という意味です。原題は「Gravity」。

地球の重力、生きることの重み、トラウマの重み、未来があることの重み、命の重み。

あらゆる視点を持つ映画です。

  

  

最後にひとつ、暗喩を。

ライアンが作業しているスペースシャトルは、映画公開当時にはもうすでに退役して使われていないものでした。

そして、事故後に向かったISSは現在存在しているステーション。

その後、地球に向かうのに使われた中国のステーション天宮は、2020年完成予定で、映画公開当時にはまだ存在しないものでした。

ライアンは、過去から現在、未来へと移動し、生きようとする力を得て生まれ変わったと見ることができます。

  

地上に到達したところが湖であり、宇宙服を脱ぎ捨てることもまた、生まれるということの意味がありそうです。

​最後のセリフには特に、すべての人類にとっての重みが感じられるでしょう。

  

  

さあ、あなたは今、何に思いをめぐらせていますか?

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