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 C i n e m a    T h e r a p y

​11.自分をもつこと、貫くこと、に不安なあなたに

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『はじまりのうた』2014

​  

監督 ジョン・カーニー

​出演 キーラ・ナイトレイ

マーク・ラファロ 他

大手レコーディング会社との契約のため、イギリスからニューヨークへとやってきたデイブと、その彼女の、シンガーソングライター、グレタ。

あっという間に人気スターになっていくデイブは浮気をしてしまう。失意のグレタは友人のところに転がり込み、ライブハウスで歌っていたところを偶然、音楽プロデューサーのダンに見いだされる。

グレタは、ダンと一緒にニューヨークの街角で録音しながらアルバムを作るという斬新な活動を始め、レコーディング会社にアピールしようと考える。

グレタはそうした自由な活動で自分の音楽に触れながら、有名になってしまったデイブとの日々を振り切るため、音楽への向き合い方が違うことを表現しながら、自作の歌をデイブの留守番電話に吹き込むが・・・

  

  

歌をつくることにおいて、グレタはスターになったデイブよりも才能がありました。

素のままのグレタはスターには程遠く、有名になることを目指すのは音楽を殺すことだと思っています。

しかしデイブは、売れるための音楽づくりを受け入れ、もっとスターを目指すべく音楽に向かいます。

 

グレタの音楽は「売れるために」つくっているものではなく、自分そのものでした。

デイブがスターになっていき、お金をかけてつくるようになった曲たちは、グレタとの日々で大事にしてきた「自分自身」の音楽ではなくなっていく、と、グレタは残念がります。

  

  

音楽とは何か。

なんのために自分は音楽をやっているのか。

何が成功で、何が正解なのか。

 

この「音楽」の部分を、あなたは何の言葉に変えるでしょうか?

今のあなたが考えなくてはならないものは、何なのでしょうか?

 

自分を大事にすることが自分を貫く道なのか。

それとも、自分の信念を犠牲にしても、大勢の人に認められてこそ意味があるものなのか。

どちらを選んでも不正解はないのかもしれません。

決めるのはあなたなのです。ただ、それだけなのです。

  

  

私が私を知っていて、私が私を今日もつくっている。ただそれだけの日々でいい。

ずっとそうやって生きていきたい。

グレタは、そう思います。

そして、才能や「良い」音楽は広く世界にアピールするべきだ、という考えに疑問をもちます。

​そこには多少の妥協と、認められるための型にハマる必要が出てくるからです。

 

歌をつくって生み出したのは私だけれど、できあがった成果物によって私が評価されるべきではない。

​グレタは、大勢に認められる世界に一歩踏み出したことで、それをはっきりと理解します。

 

 

「何になる」ために私たちは生きるのか。

「何になりたくて」生きてるのか。何かにならなければ生きられないのか。

私は私になりたい。

私はただ私でいたいだけ。

 

 

大事なのは、自分の世界を一歩飛び出してみたからこその、自分自身への理解だったということです。

何を、どの道を選んでも、不正解じゃないのだとしたら。

そういう目で、世界を見てみることから始まります。

自分のいる場所を、少しだけ広げてみる、あるいは、外に出てみて自分をふりかえること。

 

頭だけで考えていると、自分の小さな価値観だけの中で不安と迷いと疑いが出てきてしまうものかもしれません。

客観的に自分を見ることはどこかの時点で必要なのです。

一番大事なことは何なのでしょう?あなたはどの道を歩むと決めるのでしょう?

 

​ 

ある日グレタは、かつてデイブと二人で作った歌が、彼のアルバムの中でひどく装飾され、「売れる」歌になっているのを聴いて、これは本物ではないと一喝します。

では元歌のまま歌うからとデイブのライブに誘われたグレタは、そこに、決定的なものを見ます。

グレタにとって音楽をつくることは純粋な自分自身の表現。でもデイブには、それ以外にものすごく光るスター性があることを見せつけられたのです。

音楽とは?と意見を戦わせるのではなく、二人は、どの道をどのように歩むのか、という違いなだけだったことを知るのです。

そして、それはお互いに違う道だったのだと。

 

私は私、と思う人が、自分らしく生きられるようになるためには、同じく頑張っている、対極にある人のことを理解してみることも、ひとつの手のように思います。

 

何を、どの道を選んでも不正解はない。

そこから始まるものは、自分への理解とともに、他者や、ひいては世界への理解の道なのかもしれません。

 

最後に余談ですが、デイブ役はMaroon5のアダム・レヴィーンです。

ライブシーンはさすがにスター感満載の圧巻で、引き込まれます。

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